
藤田医科大学 脳卒中科 “task forest”活用事例
〜 急性期脳卒中治療で活躍する「Task Calc.」の研究を支える「task forest」 〜

藤田医科大学 脳卒中科 松本省二教授にお話しを伺いました
藤田医科大学病院で利用している「Task Calc.」(以下、タスカル)とは?
– まず、藤田医科大学病院で利用されている「タスカル」について教えてください。このアプリはどのような役割を果たしているのでしょうか?
脳卒中は、脳の血管が急に閉じたり破けることで発症し、麻痺や意識障害などが生じる疾患で、要介護状態となる主要な原因のひとつです。しかし、脳卒中の7割以上を占め、脳の血管が突然閉塞して起きる脳梗塞には、有効な治療が開発されていて発症から治療までの時間が短ければ短いほど、患者さんの命を救う可能性が高まり、後遺症も軽くなるのです。それらの治療を行うためには診察、病歴や服薬歴の確認、血圧測定、血液検査、脳の画像検査、薬剤の準備、手術室の準備など、院内の多くの職種が関係したチーム医療が必要になります。このようなチーム医療現場では、診療の傍ら主に電話で行われていますが「どこに連絡すべきか分からない」「電話がつながらない」といった問題があり、診療に余計な負担がかかっていました。「タスカル」はこうしたチーム医療における情報共有の負担を軽減するために開発されました。
– 具体的には、どのように機能するのでしょうか?
「タスカル」は、救急隊からの連絡から始まります。連絡を受けた医師の判断で脳卒中の治療が必要と判断されたら、発症時間、症状、想定治療内容、到着までの予想時間等を入力して、クリックすると、診療チーム全体に通知され、同時に必要なタスク内容が一画面で表示されます。およそ何分後にどのような診療タスクが必要な患者さんが救急搬送されてくるか通知されます。通知を受けた各担当者は、患者さんの到着前から自分の担当タスクの有無を確認でき、ある場合はすぐに準備に取り掛かることができます。例えば、CTやMRI室の放射線技師は、患者さんが到着後すぐに検査ができるように、予定検査をあらかじめ調整することが可能になります。また薬剤師は、必要な薬剤を到着までに用意することで患者さんが病院に到着後、待ち時間なく検査を行えるため治療開始までの時間を大幅に短縮でき、患者さんの予後を改善することが可能になります。
「task forest」の活用と効果
– この研究を進める上で、「task forest」を活用されていると聞きました。どのように役立っていますか?
現在AMEDの研究(ICTを利用した脳卒中センターでの遠隔診療体制整備と活用に向けた研究)でタスカルを遠隔医療に応用する研究を行っています。タスカルの開発は多くの人々が関わっており、チーム全体のタスク管理が重要になります。「task forest」を使うことで、誰がどのタスクを担当しているのかが一目で分かるようになりました。また、タスクの優先順位をつけたり、進捗状況を共有することで、研究がスムーズに進むようになっています。
– 具体的に、どのような場面で活用されていますか?
研究は藤田医科大学病院と岡崎医療センターの2病院で行われています。新しいシステム開発は、日々新たな問題点が明るみになり、その解決策を常に検討する必要があります。メンバーはそれぞれ別の場所にいるため、対面のやり取りが難しく、研究の進行状況を確認するのに時間がかかっていました。「task forest」を導入したことで、タスカル開発の進捗状況をオンラインで把握できるようになり、ムダな確認作業が大幅に削減されました。また、「タスカル」の機能追加に関する議論でも役立っています。新機能の開発には、どの機能を優先するか決めるプロセスが必要ですが「task forest」を使うことでその意思決定がスムーズになりました。
「task forest」の導入による変化

– 「task forest」を導入したことで、研究チームの業務にはどのような変化がありましたか?
以前はタスカル開発の進捗確認のためメールや電話していましたが、今は「task forest」で一目瞭然です。開発チーム全体の作業効率が向上し、時間のロスが減りました。
– コミュニケーションの面でも変化はありましたか?
はい。これまでタスカル開発において、開発チーム内でタスクの優先順位や担当者が分からず、作業が滞ることがありました。しかし「task forest」を導入してからは、優先順位に基づいた作業の順番や作業担当者が明確になったので、連携がスムーズになりアプリの機能追加が計画通り進むようになったのは大きな成果です。
「task forest」導入の決め手
– 数あるタスク管理ツールの中で「task forest」を選ばれた理由を教えてください。導入の決め手は何だったのでしょうか?
医療の研究では、細かいタスクが無数に存在します。優先順位、期日、担当者などを管理できなければ研究を進めるにあたってヌケモレや重複が出てしまいかねません。「task forest」は、ぱっと見てやらなければならないタスクを一覧で見られる点、優先順位が一目瞭然な点、担当者や期日が設定できステータス管理できる点に加え、タスクの実行にAIを利用できる点も決め手になりました。
また、複数のメンバーが同時に編集できる点も強みですね。例えば研究者チームと開発会社がリアルタイムでタスクを更新しながら議論できるので、情報共有のスピードが格段に上がりました。
– 他のツールと比較した際に、「task forest」が優れていると感じたポイントはありますか?
医療研究の現場では、タスクの優先順位を迅速変更できることが非常に重要です。例えば、ある新機能の開発を進めている最中に、ガイドラインが必要になった場合、それに必要な機能の優先度を上げて対応する必要があります。「task forest」では、この優先度の変更が直感的にできるため、プロジェクト全体の柔軟性が向上しました。
さらにAIの機能が豊富なことはとても役に立っています。例えば、本研究では特許の取得を目指していますが、今まで実務の経験はありませんでした。「task forest」では「特許取得のタスクを教えて」と入力するだけでAIが特許取得に必要なタスクを洗い出してくれて、そのままタスク管理が可能です。今まではwebで検索して複数のサイトから情報収集し、自ら整理してExcelへ転記して…という作業をしていましたが、それらを一瞬で完成させることができます。また地味ですがAIで議事録をまとめる機能も便利です。

今後の展望
– 今後、「タスカル」と「task forest」をどのように活用していく予定ですか?
「タスカル」の新機能開発が終了すれば、さらに多くの病院で活用できるようになります。そして、全国の病院で脳卒中の専門医が遠隔支援ができる体制を整えていきたいと考えています。その過程で「task forest」を活用しながら、開発チームや研究チームとの連携をより強化していきたいですね。
– つまり、「タスカル」が全国に広がることで、どこでも迅速な脳卒中治療が受けられるようになるわけですね。
そうです。医療の質を向上させ、より多くの患者さんを救うために「タスカル」を広めていき、広めるためのタスクは「task forest」を最大限活用していきたいと考えています。
– 本日は貴重なお話をありがとうございました。